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今日はROに繋ぐと、かぼちゃ頭が溢れてました。
そういえば、今年もそんな時期ですか。年末も押し迫ってきて憂鬱な今日この頃です。ふう。
で、なんとなく『読み物』を一つ書いてみました。
非ROのものですけど、まあいかにも私らしい『ジャンル:駄目人間』な代物です。
取りあえず書いてみたので、読んでくださると有難いです。
それでは、右下の入り口からお入りくださ~い。


ぴんぽ~ん。
『Trick or Treat ♪』
そんな挨拶と共に、我が家にかぼちゃの仮面をつけた子供が飛び込んできたのは、夜も7時を回ってすっかり日も暮れた頃の事だ。
(ああ、もうこんなに日が落ちるのが早くなってたんだなぁ)
寝起きの頭には、薄ぼんやりとフィルターがかかっており、自分を含めて世界に現実味が感じられない。
『Trick or Treat ……?』
再び聞こえる幼い声。
うわ、ハロウィンだよ……。
目の前のちびっ子が、私の現実感を更に希薄な物に変えて行く。
ハロウィンなんてイベント、今まで全然やったことないのになぁ……。
一昨日、新しく引っ越してきた街。
見慣れない街、見慣れない部屋、見慣れない職場、見慣れない人々、見慣れない風習。
まさか同じ日本でカルチャーショックを感じる日が来るとは思わなかった。
『Trick or Treat っ!』
目の前のちびっ子は、いつまで立っても応対しない私に苛立って来てるのかも知れない。
それでも、私は動かない。
だって、何もやる気が起きないのだから。
一昨日……引越しの日。
『アイツ』は私の前に現われなかった。
私はちゃんと、『アイツ』にさよならをしておきたかったのに、『アイツ』は一方的にそれを無視した。
ガキのクセに、私より年下のクセに、馬鹿のクセに、生意気で、人を見下して、人をおちょくりやがって、それで、それで……ちょっと頼り甲斐があって。
それでふらっと誘惑に負けて甘えるフリをしたら・・・いつかそのフリがフリじゃなくなって。
昨日……引っ越して二日目。
『アイツ』からの連絡はなかった。
番号を変えたわけでもなく、アドレスが変わったわけでもないのに、私の携帯は静かなまま。
私からは、動けなかった。
年上のプライドとか、女としての沽券にかかわるとか、そういうのじゃなくて……。
一昨昨日……引越しの、前日。
私と『アイツ』は大喧嘩をした。
喧嘩の理由は、ものすごく単純。
私が引越しをするから。
さして遠いわけでもない、たった、電車とバスを乗り継いで5時間ほど離れただけのこの街に引越しをする事になったから。
日本地図で見たら、たったの6cmの、『あっち』と『こっち』。
『だから、バイバイしよ?』と切り出したら、ものすごく怒られた。
自分でも、なんだかなぁと思う。
何でわかっていたのに、こんな行動取っちゃったんだろ。
引越しをするのは、もうずっと前から決まっていたことなのに。
お別れなんかしたら、絶対あとが辛くなるのは予測出来たのに。
初めから終わりが来るって知っていたのに。
何で、始めてしまったんだろう。
何で、あんなにも楽しい思い出達を紡いでしまったんだろう?
何で、あの地で恋愛なんかしてしまったんだろう?
何で……あんなやつを好きになっちゃったんだろう。
そして今日……新しい職場に初出勤の日。
朝から、それだけダンボールの箱から引っ張り出した毛布に包まり、私はずっと寝ていた。
自分はもっとしっかりした大人なんだと思っていたのに。
もっと強い人間なんだと思っていたのに。
自分でも、愉快なくらいのダメっぷり。
『Trick or Treat ……っ!』
ああ、目の前のちびっ子が地団太踏んでる。
馬鹿だね、この子も。
こんなのほっといて、さっさと次の家に回ればいいだけなのに。
「お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞ?」
……っ。
「このお姉ちゃんはね、大馬鹿だから日本語で言ってあげないとわかんないんだってさ~」
ぽいっ。
ポケットから取り出した小さな丸いキャンディをちびっ子の手の平の上にのせる。
ついで、私の手を取って、その上にも一粒。
「……はい、どうぞ」
目の前の馬鹿に対していろいろ文句を言いたかったが、とりあえずちびっ子にそのキャンディを渡す。
『♪~』
ようやく目的が果たされて、玄関を出て行くかぼちゃ頭。
出るときに、ぺこりと一つ頭を下げていった。
……中のちびっ子は、ものすごく真面目な子なのかもしれない。
「……で?」
「ん?」
「何であんたがここにいるのよ?」
「お前を追ってに決まってるんじゃないか?」
「……っ」
「って言うか、他に理由があるか大馬鹿」
「お、大馬鹿とか言うな馬鹿のクセにっ!」
「馬鹿に馬鹿にされる大馬鹿が悪い。自業自得だ大馬鹿」
「~~~~~っ!!」
「ああ、俺仕事も辞めてきたんでしばらくプーな。ま、しばらく養え、この大馬鹿っ!」
「なっ!?」
「まったく……もっと時間があったらもうちょっとスマートな手が打てたものを、何で引越し前日にいきなり言うよ?」
「……なんでよ?」
「おいおい、ついに日本語すら通じなくなったかよ、大馬鹿」
「……通じない。判り易く、砕いて言え」
「……」
「……」
「俺がお前にぞっこんなのはもう判りきってるだろうが!」
「ぞ、ぞっこんとかいつの時代の言い回しよ!?」
「お前の年代に合わせてやってるんだろうが大馬鹿っ」
「あ、あ、あんた私をそんなふうに見てたの!?」
「おう、こう熱い眼差しでじーっと見つめてたぞ?」
「……っ」
「……(ジー)」
「馬鹿っプルだ……」
「そうだな」
「しかも、男の方が無職のダメ人間で……」
「そうだな」
「しかも、馬鹿で」
「そうだな」
「でも、女の方がもっと馬鹿だから、
もう駄目だ~~~っ!
私はもう、我慢出来なくてその胸に飛び込んだ。
「そうだな……っと」
「馬鹿のクセに、馬鹿のクセにぃ~……」
「はいはい、そうですね大馬鹿様」

私よりも年下の馬鹿なガキの胸は、それでも私が飛び込むにはちょうどいい高さの位置にあって。
「う~……何でこんなやつを好きになっちゃったんだろう?」
「そうだな……大馬鹿だからじゃないか?」
そいつの目は、いつもみたいに私を優しく見下ろしてくれた。
片手は、優しく私の髪を撫で……、もう片方の手は自分のポケットからちびっ子に上げたのと同じ小さなキャンディを取り出す。
そして包みを開いて中の飴を……。
「ほい、あーん」
私の口に放り込む。

そして、一言。
『Trick or Treat ?』

……選べるかっ馬鹿っ!

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